「システムエンジニアはやめとけ」——このような言葉にたびたび出会います。
これから就職活動をする学生、エンジニアとして働き始めたけど想像と違った人、転職を考えている人。この記事を読んでいる方の立場はそれぞれだと思います。
私はJTCの事業会社の発注側の立場でSES業態のエンジニアと長年接してきましたし、受託側の小規模な会社でSESプレイヤーとしての立場も経験しました。数百人と仕事をしてきた中で、「やめとけ」と言われる背景にある問題は確かに存在すると感じています。一方で、この業界で着実にキャリアを築いている人も数多く見てきました。
この記事では、その両面を経験ベースで書いてみます。
「やめとけ」と言われる背景
「やめとけ」の裏には、IT業界——特にSES契約に関わる構造的な問題があります。

1. 報酬と労働時間の問題
SES契約で働くエンジニアの多くが、報酬面の悩みを抱えています。中間マージンの存在で実質的な報酬が低くなりがちなこと、納期プレッシャーや仕様変更による慢性的な残業。
この状況がモチベーションの低下や転職率の上昇につながり、業界全体の人材流出問題にも発展しています。
2. キャリアパスの不透明さ
特定の顧客や業務に依存してしまうリスク、技術の進歩に追いつけず市場価値が下がる懸念。長期的なキャリア計画を立てにくい環境が、エンジニアの成長意欲を削ぐ要因になっています。
管理職への道筋が明確でない会社も少なくないようです(そのような会社に属するエンジニア仲間から聞いた話です)。技術の急速な進化に伴い、自身の専門性が陳腐化するリスクも常に存在します。
3. 技術力向上の機会不足
顧客先に常駐する働き方だと、新しい技術に触れる機会が制限されがちです。教育投資が少ない企業も多く、スキルアップが自助努力に委ねられる現実があります。良い顧客に巡り会えるかどうかに左右される部分が大きく、ここは工夫が難しいところです。
その他の要因
これらに加えて、以下のような要因も「やめとけ」という声の背景にあります。
- 厳しい納期、顧客からのプレッシャー、予期せぬトラブル対応などのストレス
- 「IT土方」などの蔑称に代表される、専門性が正当に理解されにくい環境
- 技術の陳腐化リスク
- プロジェクトの成否による評価の変動
それでも成功している人の共通点
「やめとけ」と言われる業界で、着実にキャリアを築いている人たちを私は見てきました。彼らに共通する特徴を3つ挙げます。

3つ全てを意識してバランスよく育てていくのが理想ですが、難しければまず1つから。
1. 技術力かコミュニケーション力、どちらかに強みがある
「どちらも磨きましょう」と言うのは簡単ですが、そう簡単にスキルは身につきません。まずはどちらかに強みを見つけること。その強みがあるという自覚が自信をもたらし、行動も変わっていきます。
「または」がポイントです。両方なくても、どちらか一方の強みがあれば十分に戦えます。
2. 「価値提供者」としての視点を持っている
単なる「技術者」ではなく、ビジネスに価値を提供する「問題解決者」としての視点。「自分は技術者なんだから」と構えている人ほど、実際にはそこまでの力がない……という場面に何度も遭遇しました。
10年以上にわたって何百人ものエンジニアと仕事をしてきましたが、成果を出せる頼りになる人は、自分の力量を客観的に見ることができて、とても謙虚です。
技術が飛び抜けていなくても、「顧客のために自分は何ができるか」と考えられる人は、結果的に信頼されてチームの中心になっていきます。
長期的なキャリア戦略
もう少し長い時間軸で、どう行動すればよいかを考えてみます。

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変化への柔軟性。物理サーバーだけに関心を持っていた人は、仮想化の時代に出遅れました。コンテナ技術についても同様です。新しい技術やツールの学習はもちろん、リモートワークなど新しい働き方にも柔軟に対応できる姿勢が重要です。
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リーダーシップスキルの開発。際立った技術者を除けば、リーダー・マネージャーの立場を目指さなければ収入アップは難しいのが日本のSES市場です。「人の話を聴く力」「人に伝える力」は一朝一夕では身につかないので、日々意識して何年もかけて育てていく必要があります。
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ネットワーキング。独立する人には必須ですが、会社員でも重要です。人脈がなくても中間業者への登録で仕事は見つかりますが、待遇には上限が見えます。転職の誘いなど、機会が飛躍的に増えるのは人脈がある人です。
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ライティングと情報発信。ブログやQiitaなどでの情報発信は、認知を得るためというよりもライティング力を鍛える意味が大きいです。リモートワークが増えた昨今、テキストコミュニケーション力は直接的にあなたの評価に影響します。長文なのに意味が伝わらない——そんな人が本当に多い。ライティング能力の不足が原因で契約を早々に打ち切りにされるケースも、発注側にいると珍しくないと実感します。
おわりに
「システムエンジニアはやめとけ」と言われる背景には、確かに構造的な課題があります。低賃金、長時間労働、キャリアパスの不透明さ、技術力向上の機会不足。
ただ、これらの課題を理解した上で適切に対処すれば、エンジニアとして充実したキャリアを築くことは十分に可能です。私が見てきた中で成功している人は、例外なく自己研鑽を続けていました。
技術力とコミュニケーション力、どちらかの強みを軸にしながら、自分のキャリアを主体的に組み立てていく。それが「やめとけ」を超えていく一番の近道だと思います。


