プログラミングスクールは無駄なのか?数百人のエンジニアを見てきた私のアンサー

学びログ

プログラミングスクールは無駄なのか?

この問いに対して、私の答えは「無駄ではない。ただし、臨む姿勢によって成果は二極化する」です。

私は会社員時代、事業会社(ユーザー企業)の立場でシステム開発に携わっていました。プロダクトオーナーやプロジェクトマネージャーとして、SESの方々に仕事を手伝ってもらう立場です。何年もの間に何百人というエンジニアと接してきました。

その経験から見えたことを、率直に書いてみます。

まず、現実を知っておいたほうがいい

現在、「リスキル」という社会的な潮流もあって、IT関連スキルを身につけたいと思っている方が多いようです。IT人材不足が社会的な問題なのもあって、注目されていますよね。

  • 我が国では、欧米等と比較して、IT人材がIT関連企業に従事する割合が高く、ユーザー企業に従事する割合が低い。
  • 東京のIT関連産業(情報通信)企業への集中も顕著な状況。IT人材の東京のIT企業の集中により、地域のデジタル化を推進するIT人材の不足は課題。

我が国におけるIT人材の動向 (経済産業省,令和3年2月4日)

キャリアチェンジしたい方がプログラミングスクールを利用する流れは理解できます。ただ、ブームの最盛期(2010年代後半〜2020年コロナ前頃)に比べると下火になっています。

盛り下がっているというよりは、以前が異常な状況だったとも言えます。

当時の私は、会社員プロジェクトマネージャーの立場で「大人数の力でシステム開発の成果物を仕上げる立場」にいましたが、プログラミングスクール上がりのエンジニアが現場で全く戦力にならない状況をたくさん目の当たりにしました。

コロナ以降、様々な企業が「フリーランスエンジニアを使って痛い目を見た」という経験を抱えていて、逆にフリーランスエンジニアを避ける傾向すらあります。

よくある謳い文句について正直に言う

プログラミングを学ぶ理由としてよく挙げられるのが以下の3つです。

  • 需要が高い — これは事実です。IT人材の需要が高まっているのは間違いありません。業界全体として人を欲している状況は、労働力を提供する側には追い風です。

  • リモートワークの可能性 — 結論は「勤め先や顧客による」。本質的にはパソコン1台でどこでも仕事できますが、会社が許可していなければ意味がありません。

  • クリエイティブな仕事ができる — これも「携わった案件による」が正直なところ。日本のITの現場では、地味な業務システム開発に時間を奪われて終わり、ということも珍しくありません。

「プログラミングを通じて、世界中の人々が使えるツールやサービスを開発できる」というスクールの謳い文句は、体感9割以上の人が叶わないでしょう。SES案件に入って終了、というのが現実です。

SESとは何か

SES(システムエンジニアリングサービス)は、企業が自社のプロジェクトを手伝ってくれるエンジニアを他社から一時的に借りる仕組みです。短期間の仕事や特定のスキルが必要なときに便利ですが、多階層の業務委託が頻発する業界構造には問題もあります。

案件を選べる立場にならないと、かなり窮屈な思いをする可能性がある——これは知っておいたほうがいいです。

それでもプログラミング学習は価値がある

ここまで厳しいことを書きましたが、私はプログラミング学習については肯定的です

企業のITに対する投資は年々高まっていて、課題解決のためにエンジニアの力は必須だからです。ただし、スクールはただ通えばよいわけではなく、臨む姿勢によって成功と失敗が二極化することは知っておくべきです。

数百人のエンジニアと接してきて分かったことは、この二極化は入社後にも続くということでした。

短期間でプロにはなれない

「未経験歓迎!基礎から育成してあなたもSEに!」——新卒の就職活動ではよく見かけますよね。会社のIT基礎研修はせいぜい1〜3ヶ月。この期間で即戦力になるのは無理です。

一方で、研修後もコツコツと自己学習を続けられる人は、その後しっかり活躍できる人材に成長していきます。体感ですが、これができる人は1割くらいです。

スクールの本質的な価値

プログラミングは覚えなければいけないことが膨大です。開発言語の種類、それぞれの特徴、開発環境の整備、似て非なる用語の数々……業界未経験者にとっては特に圧倒的です。

スクールの価値は、この「わけわからん状態」を、ある程度の共通認識で会話ができるレベルまで底上げしてくれるところにあります。

数字を知らなければ四則演算はできないし、四則演算ができなければ因数分解もできない。基礎を順序立ててインプットする場として、スクールは効果的です。

「ネットで調べれば独学で十分では?」——そう言い出したら、専門学校はいらないという話になってしまいますよね。

私の学習体験

私がプログラミングを学んだのは完全に独学でした。Ruby on Rails のチュートリアルを100時間ほどやった後に、Railsを使って独自のWebサービス開発に1,000時間ほど費やしました。会社員だったので、仕事が終わってからスキマ時間でコツコツと進め、1年くらいはかかったように思います。

Ruby on Rails チュートリアル:プロダクト開発の0→1を学ぼう(無料教材ですが、よくできています)

結果、システム開発の全体像が頭でイメージできるようになり、仕事のキレが格段に上がりました。時間を使って勉強しておいてよかったと心の底から思っています。

ただ、私の場合はIT関連の知識背景があったから効率よく進められた部分も確実にあります。業界未経験の初心者がいきなり独学で挑戦するのは、かなりハードルが高いです。心の底から楽しめる数%の人なら放っておいても勝手に成長しますが、それはレアケースです。

学習の進め方

ステップ1:目標を明確にする

自分がなぜプログラミングを学びたいのか、何を実現したいのかを言葉にしましょう。「Webサイトを作りたい」「アプリを開発したい」「年収を上げたい」——目的によって学ぶべき技術が変わります。

例えば「きれいな商品販売のLP(ランディングページ)を作れるようになりたい」なら、学ぶべきはHTML・CSS・JavaScriptあたりになります。

ステップ2:まず手を動かす

いきなり検索エンジンで調べて、見よう見まねでコードを書いてみてください。そして、おそらく早々に撃沈するはずです。

調べ方がわからない、説明通りにできない、言っている意味がわからない——壁がたくさんあることを知るのが重要です。

この壁を感じずにどんどん進められるなら、スクールは不要。そのまま独学でいけるところまで行きましょう。

ステップ3:スクールを検討する

ここまできて初めてスクールを検討するのがよいタイミングです。

スクールの価値は「コースが整備されていて体系的に学べること」「不明点をいつでも相談できること」。この2点に尽きます。

よくある疑問

「高い受講料に見合うのか?」

プログラミングスクールの料金が高いのは、メンター(相談相手)の人件費が含まれているからです。テキストと動画だけのスクールなら安くできますが、「調べ方すらわからない」状態なら相談できる環境をケチるべきではありません。

しっかり学べれば、数十万円の差はキャリアチェンジ後の年収で回収できます。

「スクールで学んでも実務経験は積めないのでは?」

その通りです。スクール卒業直後に即戦力にはなれません。ただ、スクールの目的は「会話するための前提となる共通言語や知識を学ぶこと」です。目的を見失わないようにしましょう。

卒業後は「経験を積むことを目的に、大きな年収アップは一旦差し置いて、まずは案件に入ること」が現実的です。

「AIにプログラミングの仕事を奪われるのでは?」

そう簡単には奪われません。AIで生産性を向上させる方法の学習は必須ですが、AIは人間がやりたいことを代弁できません。ビジネス要件を理解し、コミュニケーションをとりながらシステム化の議論に参加できる人材——ここに価値があります。

「ただ指示を待つだけで、コミュニケーションも十分にとれず、プログラミング能力も平凡な人材」はAIに代替されるかもしれません。でも「AIを使える側のエンジニア」は間違いなく必要とされます。そのためにもプログラミングの基礎知識は非常に役に立ちます。

おわりに

プログラミングを学びたいと思って、一人で迷わず手を動かせるなら、検索する前にもう始めているはずです。自信がないからこうやって調べているなら、コースが整備されたスクールは効果的な選択肢です。

最終的には「自分がどれだけ真剣に、学びを継続し続けられるか」に尽きます。

この記事が、その判断の一助になれば幸いです。

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