WordPressでサイトを立ち上げるとき、最初に必要になるのがドメインの取得です。「自分専用のドメインを持てる」というのは初心者にとって嬉しいことですが、実は気軽に決めていい話でもありません。
ドメインは一度決めると変更がとにかく面倒です。後から変えようとすると、リダイレクト設定や検索エンジンの再評価に数ヶ月〜数年かかることもあります。さらに、メールアドレスとして使っていた場合には、もっと厄介な問題が起きます。
この記事では、ドメインの基本的な仕組みから選び方、そして初心者が見落としがちなリスクまでを整理しました。複数のドメインを取得・運用・移行してきた経験をもとに書いています。
ドメインとは何か?

ドメインの基本的な定義
ドメインとは、インターネット上でウェブサイトを識別するための名前のことです。例えば、「example.com」のように、ウェブサイトの「住所」とも言えるものです。これは、インターネット上であなたのサイトを見つけてもらうために必要なものです。
ドメインとURLの違い
ドメインはURL(Uniform Resource Locator)の一部です。URL全体はウェブページの具体的な場所を示します。
例えば、https://www.example.com/profile というURLに対しては、example.com がドメインです。URLは住所の詳細部分とするならば、ドメインはその住所のメインとなる部分と考えるとわかりやすいでしょう。
言い換えると、ドメインの部分だけであなたのWebサイトに辿り着くことができるのです。
ドメインの構成要素
ドメインは主に3つの部分から構成されています。
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ドメイン名(例: example): これはあなたのサイトのメイン部分です。
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サブドメイン(例: www): これは主に「www」ですが、他の文字列も使えます。
サブドメインはドットを重ねるごとに階層化が可能です。例えば、総務部( soumu ) に割り当てられたサブドメインの中で、更にチームごとに異なる Web サイトを持ちたいとしましょう。そうるすと、以下のとおりになります。
team1.soumu.example.com
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team2.soumu.example.com
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ただ、個人運営の WordPress サイトにおいおてはサブドメインを使って運営するケースは少数派で、多くの場合はドメインのみでのサイト運営が可能でしょう。
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トップレベルドメイン(TLD: Top Level Domain): これは「.com」「.net」「.jp」などの部分です。
ドメイン名の重要性と役割
ブランドイメージとドメイン名
覚えやすく、発音しやすいドメイン名は、ブランドイメージを高める効果があります。訪問者が再訪しやすくなるため、ビジネスの成功にも直結します。例えば、「amazon.com」や「google.com」のようなシンプルで覚えやすいドメイン名は、多くの人に愛用されています。
ユーザーの信頼性とドメイン名
信頼性のあるドメイン名は、訪問者に安心感を与えます。特に「.com」や「.net」、「.org」などのプロフェッショナルなTLDを使用することが推奨されます。これにより、訪問者はあなたのサイトが信頼できるものであると感じやすくなります。
例えば「.xyz」というTLDが存在しています。ここで、「google.xyz」というドメインからのメールやURLの案内がきたらどのように感じますか?
何も感じないかたも一定数はいると思いますが・・・(汗)
直感が働く方は、「あれ、あまり見慣れないドメインだけど大丈夫かな?詐欺だったりしないかな?」と気がつく可能性があります。
実際のところ「google.xyz」に関しては、ドメイン取得情報によると Google LLC により登録されているので本物のGoogleで間違いないようですが(2024/07現在)、全くの関係のない業者が悪意をもって取得している可能性もあります。
結論、ユーザーに余計な心配をかけないために、よく見慣れているTLDを利用しておくのが無難でしょう。日本ならば「.com」あるいは「.jp」のいずれかにしておけば間違いありません。
インターネット黎明期においては「.com」「.net」、「.org」は定番でした。しかし202X年現代、主観になりますが「.net」、「.org」さえも微妙な印象があります。TLDの自由化により種類が増えすぎたので、特別感が残っているのは「.com」だけになってしまったような感覚がありますね。
コラム:SEOにおけるドメイン名の影響は無い
ドメイン名はSEO(検索エンジン最適化)に影響を大きく影響を与える・・・と言われますね。
一昔前はそうだったかもしれませんが、現在では Google により明確に否定されています。なので現代においては、ブランドやマーケティングの側面だけで決定してよいでしょう。
Google が重要でないと考えること(2024/07/23現在)
Google 公式 SEO スターター ガイド | Google 検索セントラル | ドキュメント | Google for Developers
しかしながら、検索エンジンはGoogleだけに限ったものではないという点は頭の片隅に入れておいてもよいでしょう。
実質的に Google の検索エンジンが支配的な時代においては、Googleの仕組みに則っていれば問題はありません。その一方で、今後のAIの発展によりWeb検索に関する状況が一変する可能性もあります。その時の新たなリーダーがドメイン名をどのように解釈するのかは別問題です。
後悔しないドメイン名の選び方
ドメイン名の検討においては、以下の観点を考慮しましょう。
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覚えやすさとシンプルさ:ドメイン名は短く、覚えやすいものが理想です。長すぎると、タイピングミスや覚えにくさが問題になります。シンプルで直感的な名前を選ぶことで、訪問者が再訪しやすくなります。
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キーワードの使用:サイトの内容に関連するキーワードを含めても、SEO効果はほとんどありませんと謳われています(既出の引用画像より)。無理にキーワードを詰め込むのは避け、自然で覚えやすい名前を選びましょう。あくまでもユーザーのことを考えるのが大切です。
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長期的な視点での選択:ドメイン名は長期間使用するものです。将来的に変更しにくいので、慎重に選びましょう。ビジネスの成長や方向性を考慮し、長期的に使える名前を選ぶことが大切です。
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他社の商標やブランド名を疑われる利用はしない: 訴えられてドメインが利用できなくなった場合、そのドメインで作ったコンテンツが全て水の泡です。わざわざリスクを犯すべきではありません。
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数字の乱用: 意図したキーワードとして数字が意味を持っているならばよいのですが、そうでない場合には乱用しないようにしましょう。例えば、「お気に入りのキーワードでドメインが取得されていたから、連番でドメインを取得した」みたいなケースです。誤解を招きやすく、覚えにくいため、訪問者の混乱を招くことがあります。
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トレンドに左右されないドメイン名: 一時的な流行にとらわれず、長期間使用できるドメイン名を選びましょう。例えば流行語を使ったドメイン名は避け、将来性のある名前を選ぶことが重要です。但し、Webサイトの主要コンテンツがトレンド性を強く持っている場合は、特化型のWebサイトでしょうから意図的に狙っていくのは妥当な場合もあります。
もしドメイン名を変更したくなったら
ドメイン名の変更そのものは技術的にはさほど難しいものではありません(初心者にとっては難しく感じる部分があるかもしれません)。
それ以上に難しいのが、検索エンジンからの評価の影響や、既に露出しているドメイン(URL)への対応です。SNS等でサイトのURLを多数紹介している場合、ドメイン名を変更するとアクセスができなくなってしまいますよね。そのために変更前のドメインから新しいドメインへの転送(リダイレクト)できるようにWebサーバーを設定することにならいます。
この時に必要な期間は、数ヶ月〜数年、あるいは永遠です。
関連する事故として、2023年にNTTドコモで発生した、廃止ドメインのオークション出品問題があります。サービス終了後にドメインの更新を怠り、第三者がオークションで取得できる状態になったという事例です。
ドコモ、失効した「ドコモ口座」のドメインを取り戻す、失効の原因は「社内管理の不手際」 - ケータイ Watch
このように、一定の価値が認められているドメインであるほど、転送させるための期間を長引かせる必要があります。
コンテンツ数が多いほど変更前のドメインはアクセスが多かった可能性がありますので、そのドメインが悪意を持った誰かに使われることを避けるために、一定期間は古いドメインも保持し続ける必要があります。
このように、「新しいドメインを取得して、はい終了」とはいかず、考えることがとても多いのです。そのため、「ドメインは後から変更すればいっか」くらいの安易な気持ちで取得しないように注意しましょう。
独自ドメインのメールアドレスに潜むリスク
独自ドメインを取得すると、「自分だけのメールアドレスを作れる」ことに魅力を感じる方も多いと思います。[email protected] のようなアドレスは確かにプロフェッショナルに見えます。
ただし、ここには見落としがちなリスクがあります。
ドメインを手放したときに何が起きるか
独自ドメインのメールアドレスを日常的に使い始めると、いろいろなサービスの会員登録にそのアドレスを使うようになります。ショッピングサイト、クラウドサービス、SNS——気づけば数十のサービスに登録している状態になります。
ここで、何かの事情でそのドメインを手放したとします。ドメインの更新を忘れた、サイトを閉鎖した、別のドメインに移行した。理由は何であれ、ドメインが失効するとそのドメインは誰でも取得できる状態になります。
もし第三者がそのドメインを取得した場合、以下のようなことが起きえます。
- そのドメイン宛のメールを受信できるようになる
- パスワードリセットメールを受け取り、各種サービスのアカウントを乗っ取れる可能性がある
- ショッピングサイトの注文履歴や配送先住所が閲覧される恐れがある
これは理論上の話ではなく、実際に起きている問題です。NTTドコモの「ドコモ口座」廃止ドメインがオークションに出品された事例は、まさにこの問題を象徴しています。
対策
独自ドメインのメールアドレスを使うこと自体は問題ありません。ただし、以下を意識しておく必要があります。
- どのサービスにどのメールアドレスで登録しているか把握しておく
- ドメインを手放す際は、事前にすべてのサービスのメールアドレスを変更する
- 重要なサービス(銀行、決済、クラウド等)にはGmail等のプラットフォーム依存のアドレスを使うほうが安全
初心者ほど「自分専用のドメインでメールアドレスも作れる!」と嬉しくなりがちですが、そのドメインを一生使い続ける覚悟がない場合は、メールアドレスの運用には注意が必要です。
日本語ドメイン名は推奨しない
日本語ドメイン名は一部の人々にとって魅力的に感じるかもしれませんが、いくつかの理由から使用を推奨しません。
特に国際的なビジネスや広範なユーザー層を対象とする場合は、日本語ドメイン名は避ける方が良いです。ドメイン名は、ユーザーにとって分かりやすく、アクセスしやすいものであるべきです。英語のドメイン名を選択することで、互換性、ユーザビリティ、管理の容易さなど、多くのメリットが得られます。日本語ドメイン名の魅力に惑わされず、実用性を重視した選択をすることが重要です。
なお、既出の通り「SEOへの影響」に限っては、さほど影響がない時代になっているのかもしれません。
理由1 ユーザビリティの低下
日本語ドメイン名は、国際的なユーザーにとって理解しづらく、入力も難しいです。特に、日本語を理解しないユーザーにとっては大きな障壁となります。英語圏や他の非日本語圏のユーザーが日本語ドメイン名を正確に入力するのは困難で、その結果、アクセスが減少する可能性があります。また、日本語を母国語としないユーザーがURLを共有する際にも問題が生じることがあります。
理由2: 管理の複雑さ
日本語ドメイン名を登録・管理する際に、エンコードやデコードの問題が発生することがあります(初心者向け説明: エンコード・デコード= 文字列を変換する作業と捉えてください)。
これにより、管理が複雑になり、トラブルシューティングが難しくなることがあります。日本語ドメイン名は、Punycodeという形式でエンコードされます。
「はじめてのワードプレス」=「xn—78j2ayab5gxpvdye9h1a7l」
わけわかりませんよね? Chrome など現代のブラウザでは、アドレスバー上では日本語で見えるので、この内部の技術的問題に気が付きづらかったりします。
このように実際の運用上は英数字の長い文字列になることで識字しづらく、ミスが発生する可能性があり、それが原因でドメインが正しく機能しないことがあります。さらに、日本語ドメイン名の更新や移管手続きも複雑になることが多く、特に技術的な知識が少ない管理者にとっては大きな負担となります。
理由3: フィッシング詐欺のリスク
日本語ドメイン名は、見た目が非常に似ている文字を使用してフィッシング詐欺に悪用されるリスクもあります。たとえば、「例.com」と「例.com」(微妙に異なる文字コードを使用)が一見同じに見えますが、異なるドメインです。これにより、ユーザーが誤って偽のウェブサイトに誘導される可能性があります。
このようなリスクを避けるためにも、日本語ドメイン名の使用は慎重に検討する必要があります。
まとめ
ドメインは「最初に決めて、あとは長く使い続けるもの」です。だからこそ、最初の選択に少し時間をかける価値があります。
SEOへの直接的な影響はGoogleが否定しているので、ブランドとしての覚えやすさ・信頼感を基準に選べば問題ありません。TLDは .com か .jp にしておくのが無難です。
「後から変えればいい」と思っていると、コンテンツが増えるほど移行コストが膨らみます。さらにメールアドレスとして使い始めると、ドメインを手放すリスクも格段に上がります。ドメインは気軽に取れるけれど、気軽に捨てられるものではない。その認識を持っておくだけで、だいぶ違うと思います。



